休職中の公務員が株式投資・株取引をしていても大丈夫?

公務員が休職中の行動が問題になることがあります。
株式投資や株取引についても、注意すべき行動があります。

公務員の株式投資・株取引

公務員も株式投資・株取引は禁止されていません。
預貯金等と同様、資産運用の手段であり、公務員だからといって禁止されるということはありません。

もちろん、法令違反するようなことはできませんし、公務員の服務上の義務や制限に違反するようなことがあってはいけません。

株式投資・株取引と職務専念義務

公務員はその勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、政府・地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければなりません(国家公務員法第101条、地方公務員法第35条)。

職務専念義務が課されている間に株取引をすると、これは違反行為になります。

株式投資・株取引と公務員の副業制限

株取引が継続反復的に行われる場合、副業制限との関係で問題になる場合があります。

服務上の義務として公務員は副業が制限されており、自ら営利企業を営むことが禁止されています(国家公務員法第103条、地方公務員法第38条)。
株取引の形態によっては自ら営利企業を営むことと判断されるおそれがあります。

もっとも、一般常識で通常の株取引と考えられるような株取引であれば制限に違反することはありません。

その他株式投資・株取引にかかる義務・制限等

一部の公務員には株式投資・株取引について報告義務が課されています。

本省審議官級以上の職員は、毎年の株取引等についての株取引等報告書を、各省各庁の長等に提出しなければなりません(国家公務員倫理法第7条)。
一定の大株主である国家公務員は、その会社が在職する機関と「密接な関係」にあるときは、人事院に報告しなければなりません。

また、一部の省庁では内規や行動ガイドライン等で株式取引等を制限しています。

こうした義務や制限を遵守することも求められます。

公務員の休職と株式投資・株取引

公務員の休職については、法令で規定されています。

一般職の国家公務員については国家公務員法及び人事院規則で、自衛官については自衛隊法及び自衛隊法施行規則で休職が定められています。
地方公務員の休職については、地方公務員法並びに各自治体が定める条例及び人事委員会規則等で定められています。

基本的には一般職の国家公務員と同じような内容になっていますが、具体的な内容についてはそれぞれの所属に確認が必要です。

公務員の休職の種類と根拠規定

公務員の休職については、法律で定めるものと規則等で定めるものがあります。

法律で定めるものは、本人の意思に反する休職として

  • 心身の故障のため、長期休養を要する場合のもの
  • 刑事事件に起訴された場合のもの

の2つがあります。

第七十九条 職員が、左の各号の一に該当する場合又は人事院規則で定めるその他の場合においては、その意に反して、これを休職することができる。
一 心身の故障のため、長期の休養を要する場合
二 刑事事件に関し起訴された場合

国家公務員法第79条

第四十三条 隊員は、次の各号の一に該当する場合又は政令で定める場合を除き、その意に反して休職にされることがない。
一 心身の故障のため長期の休養を要する場合
二 刑事事件に関し起訴された場合

自衛隊法第43条

第二十八条
2 職員が、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、その意に反して、これを休職することができる。
一 心身の故障のため、長期の休養を要する場合
二 刑事事件に関し起訴された場合

地方公務員法第28条第2項

規則等で定めるものは、

  • 特定業務等に従事する場合
  • 災害等により生死不明または所在不明の場合

等があります。

第三条 職員が次の各号のいずれかに該当する場合には、これを休職にすることができる。
一 学校、研究所、病院その他人事院の指定する公共的施設において、その職員の職務に関連があると認められる学術に関する事項の調査、研究若しくは指導に従事し、又は人事院の定める国際事情の調査等の業務若しくは国際約束等に基づく国際的な貢献に資する業務に従事する場合(次号に該当する場合、派遣法第二条第一項の規定による派遣の場合及び法科大学院派遣法第十一条第一項の規定による派遣の場合を除く。)
二 国及び行政執行法人以外の者がこれらと共同して、又はこれらの委託を受けて行う科学技術に関する研究に係る業務であつて、その職員の職務に関連があると認められるものに、前号に掲げる施設又は人事院が当該研究に関し指定する施設において従事する場合(派遣法第二条第一項の規定による派遣の場合を除く。)
三 規則一四―一八(研究職員の研究成果活用企業の役員等との兼業)第二条第一項に規定する研究職員の官職と同規則第一条に規定する役員等の職とを兼ねる場合において、これらを兼ねることが同規則第四条第一項各号(第三号及び第六号を除く。)に掲げる基準のいずれにも該当するときで、かつ、主として当該役員等の職務に従事する必要があり、当該研究職員としての職務に従事することができないと認められるとき。
四 法令の規定により国が必要な援助又は配慮をすることとされている公共的機関の設立に伴う臨時的必要に基づき、これらの機関のうち、人事院が指定する機関において、その職員の職務と関連があると認められる業務に従事する場合
五 水難、火災その他の災害により、生死不明又は所在不明となつた場合

人事院規則11-4(職員の身分保障)

これらのうち、休職中の株式投資・株取引と関連する可能性があるのは、法律に規定するものです。
そこで、この法律に規定するものに絞って検討します。

株式投資・株取引と心身の故障のため長期の休養を要する場合

いわゆる病気休職の場合です。

病気休職は長期の休養を要するためのものですから、その間は職務専念義務は免除される一方、休養に専念する義務が生じます。
病気休職中は休養に専念しなければならず、休養の妨げになる行為には制限が加えられます。

確かに、常識的な範囲で行われる株取引が休養の妨げになるとは考えられません。
しかし、長時間にわたって取引を繰り返す、トレーダーのようなやり方だと、休養に専念しているとはいえなくなるでしょう。

また、取引の形態によっては副業制限との関係で問題になるかもしれません。

さらに、職務に復帰できるにもかかわらず継続的に株取引していた場合には、信用失墜行為と判断されるおそれもあります。

病気休職中の公務員が株式投資・株取引をしたとしても、直ちに問題になるわけではないでしょう。
ただ、あくまで休養の妨げにならないよう、常識的な範囲で取引していた場合に限ります。

株式投資・株取引と刑事事件に関し起訴された場合

いわゆる起訴休職の場合です。

起訴休職中は職務専念義務が免除されます、というか職務に従事できません。

だからといって自由に行動できるわけではありません。
裁判期間ですから、そちらに時間をさくことになるでしょう。
また、起訴の内容次第ですが、反省を表すためにしおらしくしていることが必要になるかもしれません。

確かに、起訴休職中だからといって株式投資・株取引が禁止されることはありません。
しかし、その時期に株取引などをしても有利になることはないように思われます。

行動に気をつけないと懲戒処分になることも

休職中ではありませんが、病気休暇中の行動のせいで懲戒処分になった事例があります。

松原市は、病気休暇中にパチンコ店で遊興し、療養専念義務を怠り市民の信頼を著しく損ねたとして、市民生活部所属の男性主任(53歳)を8月29日付けで停職2月の懲戒処分とした。

松原市「職員の処分について(平成26年8月29日)」
https://www.city.matsubara.lg.jp/shisei/kouhou/5/3/7281.html

この事例では、病気休暇中にパチンコ店で遊興したことが療養専念義務を怠ったことにあたると判断されました。
そしてそれが信用失墜行為とされ、懲戒処分となっています。

パチンコをすることが療養専念義務を怠ったことなるのか、それが信用失墜行為にあたるのか、疑問点がないわけでもありません。

しかし、公務員が職務を離れている間に職務以外のことをしていると不満に思う市民・住民は少なくありません。
信用失墜行為は市民・住民の感情次第という側面もないわけではありません。

もちろん株はパチンコとは違います。
だからといって違う取り扱いになるとは限りません。
むしろギャンブルとひとくくりにされて同じように扱われてしまうおそれもあります。

休職中の公務員は行動に注意

休職中の公務員が株式投資・株取引をしても直ちに問題になるわけではありません。

しかし、場合によっては問題になり、最悪の場合懲戒処分となるおそれもないわけではないのです。